第227回 法定調書のe-Tax訂正:無効分→訂正分・合計表は対象分だけ・訂正送信に仕訳なし(5日練習付き)

第226回では、法定調書をe-Taxで提出する場面を確認しました。

今回は、送信後に司法書士Bの氏名の一字を誤っていたと分かった場合です。

e-Taxで提出済みの法定調書を訂正するときは、元の内容を「無効分」として送り、次に正しい内容を「訂正分」として送ります。請求書と帳簿が正しければ、この訂正送信に仕訳はありません。

1.訂正と追加は別の手続

国税庁の令和8年分法定調書の手引第9章は、提出済みの調書に誤りがある場合と、提出漏れがある場合を分けています。

状況 処理 送信するもの
提出済みの調書に誤りがある 訂正 無効分、続いて訂正分
提出すべき調書を送っていない 追加 追加分

T社はBの支払調書を提出済みなので、追加分ではなく訂正として処理します。

2.無効分と訂正分を順番に送る

e-Taxの公式Q&Aでは、先に無効分を送り、次に訂正分を送る手順が示されています。それぞれに法定調書合計表を付けます。

順序 支払調書 合計表
1 1月10日に送信した誤った氏名を含む内容を、そのまま再現した無効分 無効にするBの分だけを記載した無効分
2 氏名を正し、ほかの項目も根拠資料と照合した訂正分 訂正するBの分だけを記載した訂正分

無効分に正しい氏名を書くのではありません。提出済みデータを特定して無効にするため、氏名の誤りを含めて元の内容と同じにします。

訂正分は氏名だけでなく、金額や住所などの全項目を根拠資料と照合して作ります。

3.合計表には対象分だけを記載する

第225回で確認した年分全体のⒶ2人・100,000円・8,168円を、訂正時の合計表へ転記するものではありません。国税庁の手引とe-Taxソフト(WEB版)の公式手順に従い、無効分と訂正分の各合計表には対象となるBの分だけを記載します。

区分 人員 支払金額 源泉徴収税額
Ⓐ計 1人 60,000円 5,105円
ⒷⒶのうち支払調書を提出するもの 1人 60,000円 5,105円

同じ内容で、提出区分が「無効」の合計表と「訂正」の合計表を別々に作ります。二つを一枚の合計表で相殺する処理ではありません。

4.e-Taxソフト(WEB版)での訂正手順

  1. 1月10日の送信データ、受信通知、請求書などを照合し、誤った箇所を確定する。
  2. 令和8年分について「無効分を提出される方」を選択する。
  3. 前回受付番号と前回受付年月日を入力する。
  4. 提出済みの誤った支払調書と同じ内容を作り、Bの分だけを記載した無効分の合計表を作る。
  5. 内容を確認し、電子署名を付けて送信する。
  6. 次に「訂正分を提出される方」を選び、正しい支払調書とBの分だけを記載した訂正分の合計表を作る。
  7. 内容を確認し、電子署名を付けて送信する。
  8. 二回の送信について、それぞれ受信通知を確認する。

前回の提出でe-Taxを利用していない場合や、前回受付番号などが分からない場合は、公式手順上、その入力を省略できます。

画面構成は変更されることがあります。実際に操作するときは、その時点の公式手順を確認してください。

5.二回の受信通知を確認する

e-Taxでは送信直後に即時通知が表示され、その後、メッセージボックスに受信通知が格納されます。e-Taxの送信確認に関するQ&Aに従い、エラー情報がないかを確認します。

対象 確認内容
元の提出 送信日、受付番号、誤っていた項目
無効分 元の内容との一致、受付日時、受付番号、エラーの有無
訂正分 正しい氏名と金額、受付日時、受付番号、エラーの有無
対応関係 どの提出を無効にし、どの提出へ置き換えたか

送信操作だけで終わりにせず、無効分と訂正分の双方が正常に受け付けられたことまで確認します。

6.氏名の訂正送信に仕訳はない

2026年12月25日に計上した取引の仕訳は、請求書と帳簿に誤りがないため変更しません。

借方科目 借方金額 貸方科目 貸方金額
支払手数料 60,000円 未払金 66,000円
仮払消費税等 6,000円
合計 66,000円 合計 66,000円

1月12日の訂正送信では、支払も債務の増減も生じません。このため、無効分と訂正分の送信について新たな仕訳はありません。

勘定科目 残高の側 訂正送信前 訂正送信後
支払手数料 借方 60,000円 60,000円
仮払消費税等 借方 6,000円 6,000円
未払金 貸方 66,000円 66,000円
預り金(源泉所得税等) 貸方 0円 0円

支払調書に内書きした5,105円は、作成時点で未徴収の見積税額です。Bへの支払前には実際の徴収が行われていないため、帳簿上の預り金は0円のままです。

支払金額の誤りから帳簿の誤記も見つかった場合は、法定調書の訂正とは別に訂正仕訳の要否を検討します。今回は氏名欄だけの誤りなので、訂正送信に仕訳はありません。

7.5日で定着させる練習

日 練習内容 確認点
1日目 事例を訂正と追加に分ける すでに提出した調書かを先に見る
2日目 提出済みデータから無効分を作る 誤りも含めて同じ内容にする
3日目 根拠資料から訂正分を作る 全項目を照合する
4日目 二枚の合計表を確認する 各送信の対象分だけを記載する
5日目 受信通知と仕訳の要否を確認する 提出手続と帳簿修正を分ける

8.まとめ

提出済みの支払調書に氏名の誤りがあった場合は、元の内容を無効分として送った後、正しい内容を訂正分として送ります。各合計表に記載するのは対象となるBの分だけです。請求書と帳簿に誤りがない本設例では、訂正送信によって勘定残高は変わらず、新たな仕訳も生じません。

第226回 法定調書のe-Tax等提出義務ゼロ入門:2027年から前々年30枚以上・今回1枚でも書面不可(5日練習付き)

第225回では、司法書士2人分を法定調書合計表へ集計し、個別の支払調書は1人分を提出すると確認しました。

今回は、その1枚をどの方法で提出するかを考えます。

T社は、2025年中に提出すべきであった同じ種類の支払調書が30枚でした。2027年に提出する支払調書が1枚でも、書面では提出できません。e-Tax等による提出が必要です。

1.基準年は2025年

所得税法228条の4による判定では、法定調書の提出期限が属する年の前々年に提出すべきであった、同じ種類の法定調書の枚数を使います。

年 役割 T社の事実
2025年 基準年 同じ種類の支払調書を30枚提出すべきであった
2026年 支払調書の対象年 司法書士2人への報酬等を合計表へ集計する
2027年 提出期限が属する年 個別調書1枚と合計表を提出する

2027年の提出方法を決める基準年は2025年です。2026年分の人数や、今回提出する1枚で判定するのではありません。

2.2027年から30枚基準になる

国税庁のタックスアンサーNo.7455では、2027年1月1日以後に提出すべき法定調書について、前々年の同種調書が30枚以上ならe-Tax等による提出が必要とされています。2026年12月31日以前に提出すべき法定調書の基準は100枚以上です。

30枚以上の基準に対して30枚なので、T社には電子的な提出義務があります。

29枚なら、この30枚基準だけを理由とする義務は生じません。ただし、任意にe-Tax等を利用することはできます。

3.「2人」「1人」「30枚」を分ける

数字 意味 義務判定に使うか
Ⓐ2人 2026年分の合計表に集計する人数 使わない
Ⓑ1人 2027年に個別調書を提出する人数 基準枚数には使わない
2025年の30枚 基準年に提出すべきであった同種調書の枚数 使う

判定は法定調書の種類ごとに行います。「報酬、料金、契約金及び賞金の支払調書」と「不動産の使用料等の支払調書」など、異なる種類を足して30枚とすることはありません。

また、基準となるのは実際に提出した枚数ではなく、提出すべきであった枚数です。提出漏れがあっても、その分を除いて判定することはできません。

4.認められる提出方法は三つ

方法 概要 T社の選択
e-Tax インターネットでデータを送信する 選択する
認定クラウド等 国税庁長官の認定を受けたクラウドサービス等を利用する 選択しない
光ディスク等 所定形式のデータをCDやDVDなどで提出する 選択しない
書面 紙で提出する 今回の同種調書には選択できない

30枚基準が直接判定するのは、同じ種類の個別法定調書です。T社はe-Taxを選ぶため、個別調書1枚と合計表を電子送信します。

「報酬、料金、契約金及び賞金の支払調書」と法定調書合計表は、e-Taxソフト(WEB版)でも作成・提出できます。

5.送信する数字を照合する

データ 人員 支払金額 源泉徴収税額
合計表Ⓐ 2人 100,000円 8,168円
合計表Ⓑ 1人 60,000円 5,105円
Bの個別調書 1人 60,000円 5,105円

合計表ⒷとBの個別調書は、人員・支払金額・源泉徴収税額が一致します。Ⓐとの差額は、個別調書を提出しないCの分です。

順序 確認すること
1 2025年に提出すべきであった同種調書が30枚であること
2 個別調書と合計表の人員、支払金額、源泉徴収税額
3 年分、提出区分、提出先、利用者識別番号など
4 電子署名を付け、2027年2月1日までに送信すること
5 送信後に受信通知を開き、エラーがないこと

e-Taxの利用の流れによると、送信直後の画面はデータ形式などのチェック結果です。その後、メッセージボックスに格納される受信通知も確認します。受信通知は、提出内容そのものに対する税務署の審査結果ではありません。

6.提出した日には仕訳をしない

2027年1月10日は、法定調書を送信しただけです。金銭の支払や、新しい債権・債務の発生はありません。

この日の仕訳はありません。

勘定科目 残高の向き 提出直前 提出直後 増減
普通預金 借方 100,000円 100,000円 0円
未払金 貸方 66,000円 66,000円 0円
預り金(源泉所得税等) 残高なし 0円 0円 0円

未払金66,000円は、支払調書を提出しても消えません。Bへの支払前なので、預り金5,105円もまだ計上しません。支払調書へ未徴収の源泉徴収税額を記載することと、帳簿に預り金を計上することは別です。

7.5日で確認する

日 問題 答え
1日目 2027年に提出期限が来る法定調書の基準年はいつか 2025年
2日目 基準年が29枚、今回が80枚なら、30枚基準による義務は生じるか 生じない。基準年が29枚だから
3日目 種類の異なる法定調書を足して30枚と判定するか 判定しない。種類ごとに分ける
4日目 提出操作だけを行った日の仕訳は何か 仕訳なし
5日目 e-Taxで送信した後に確認するものは何か 受信通知

8.確認に使った一次資料

9.まとめ

  • 2027年1月1日以後に提出すべき法定調書は、前々年の同種調書が30枚以上ならe-Tax等による提出が必要です。
  • T社は2025年に30枚だったため、2027年に提出する個別調書が1枚でも書面では提出できません。
  • 判定は種類ごとに行い、合計表の人数や今回の提出枚数とは分けます。
  • e-Taxでは受信通知まで確認します。提出操作だけなら仕訳も残高も動きません。

見る数字は三つです。提出年、前々年、同じ種類の枚数。この順に確認します。

第225回 司法書士報酬の法定調書合計表:Ⓐ2人・Ⓑ1人と預り金0円が両立する理由

第224回では、未払の司法書士報酬について個別の支払調書を作成しました。

今回は、司法書士2人分を法定調書合計表へ全件記載する設例で、Ⓐが2人、Ⓑが1人となる理由と、合計表の源泉徴収税額が帳簿の預り金残高と一致しない理由を確認します。

法定調書はその年中に支払が確定した報酬等を集計します。一方、預り金は実際の支払時に源泉徴収した税額を納付するまで計上する負債です。対象とする期間と計上時点が異なるため、合計表の源泉徴収税額が8,168円でも、作成時点の預り金残高は0円になり得ます。

1.支払先ごとの金額を確定する

国税庁「No.2801 司法書士等に支払う報酬・料金」によると、司法書士報酬の源泉徴収税額は、同一人への1回の支払金額から10,000円を控除し、その残額に10.21%を乗じて計算します。1円未満は切り捨てます。

支払先 税抜報酬 計算 源泉徴収税額 作成時の状態
司法書士B 60,000円 (60,000円-10,000円)×10.21% 5,105円 未払・未徴収
司法書士C 40,000円 (40,000円-10,000円)×10.21% 3,063円 支払・納付済み
合計 100,000円 5,105円+3,063円 8,168円 ―

報酬と消費税等が明確に区分されている場合は、税抜報酬だけを源泉徴収の対象として差し支えないとされています。本設例の計算もこの取扱いを前提としています。

2.提出する支払調書はBの1枚

令和8年分法定調書の手引「第4章」では、司法書士報酬を含む区分について、同一人に対する年中の支払金額が5万円を超えるものを支払調書の提出範囲としています。

したがって、税抜報酬60,000円のBは提出対象です。40,000円のCは5万円を超えないため、提出対象ではありません。

手引は、年中に支払が確定した未払報酬も支払調書へ記載し、作成日現在の未払額と未徴収税額を内書きするよう示しています。Bの支払調書には、支払金額60,000円と源泉徴収税額5,105円を記載し、それぞれ全額を未払額、未徴収税額として内書きします。

消費税等を支払金額から除外して記載する場合は、摘要欄に除外した消費税等の額を記載します。本設例ではBの消費税等6,000円を摘要欄に記載します。

3.全件記載を選ぶとⒶは2人、Ⓑは1人になる

令和8年分法定調書の手引「第8章」に従い、すべての報酬等を合計表へ記載する方法を選ぶと、次のようになります。

合計表の欄 個人 個人以外 支払金額 源泉徴収税額
弁護士、税理士等の報酬又は料金(2号該当) 2人 0人 100,000円 8,168円
Ⓐ 計 2人 0人 100,000円 8,168円
Ⓑ Ⓐのうち支払調書を提出するもの 1人 0人 60,000円 5,105円

人員は支払回数ではなく、報酬を受ける人の実人員です。ⒶにはBとC、Ⓑには支払調書を提出するBだけを含めます。

Bの未徴収税額5,105円は、源泉徴収税額の内数です。内書きした5,105円を合計額へ重ねて加算するわけではありません。

手引は、合計表へ実際に提出する支払調書の分だけを記載する方法も認めています。その方法を選ぶ場合は、ⒶもⒷと同じ1人、60,000円、5,105円になります。本設例は全件記載を選んだ場合であり、人員だけを全件、金額だけを提出分とするような混在はしません。

4.預り金残高が0円になる仕訳

次の仕訳は、源泉徴収と預り金残高の動きに焦点を当てるため、消費税等を支払報酬に含めて表示した簡略例です。

日付 借方 貸方 仕訳後の預り金残高
2026年7月15日 支払報酬 44,000円 普通預金 40,937円
預り金 3,063円
3,063円
2026年8月10日 預り金 3,063円 普通預金 3,063円 0円
2026年12月25日 支払報酬 66,000円 未払金 66,000円 0円
2027年1月10日 支払調書と合計表の作成自体には仕訳なし 0円

各仕訳の借方合計と貸方合計は一致しています。Cから源泉徴収した3,063円は納付時に預り金から消えます。Bについては報酬をまだ支払っておらず、源泉徴収もしていないため、未払計上時には預り金を計上していません。

したがって、全件記載した合計表の源泉徴収税額は8,168円である一方、2027年1月10日時点の預り金残高は0円です。

合計表の8,168円は、2026年中に支払が確定した報酬等に対応する「源泉徴収すべき税額」の合計です。帳簿の預り金0円は、作成時点で実際に徴収済みかつ未納となっている税額がないことを示します。両者は意味と計上時点が異なるため、一致しなくても直ちに誤りではありません。

なお、未払報酬について見積記載した税額と、その後実際に徴収した税額が異なる場合は、国税庁の手引に従って法定調書を訂正する必要があります。

第224回 司法書士報酬の支払調書ゼロ入門:同一人へ年5万円超・未払額の内書き・2027年2月1日の期限(5日練習付き)

第223回では、司法書士報酬を支払った日の源泉徴収と仕訳を確認しました。

今回は、2026年中に報酬が確定し、支払が2027年になる場合です。

支払調書には未払報酬と未徴収税額を記載します。一方、帳簿の預り金は、実際に報酬を支払って源泉徴収するときに計上します。

1.五つの日付を分ける

支払調書は、法人の事業年度ではなく、暦年中に支払の確定した金額を集計します。現金を動かした日だけで判定するものではありません。

日付 処理
2026年12月25日 業務完了と支払確定。費用、仮払消費税等、未払金を計上する
2026年12月31日 決算日。未払金66,000円が残り、預り金はまだ生じない
2027年1月10日 支払調書を作成・提出。未払額と未徴収税額を内書きする
2027年1月20日 Bへ支払う際に源泉徴収する
2027年2月1日 令和8年分法定調書の提出期限
2027年2月10日 源泉徴収した税額の納付期限

令和8年分の通常の提出期限に当たる2027年1月31日は日曜日です。このため、国税庁の令和8年分手引では2027年2月1日月曜日が提出期限とされています。

2.提出基準は同一人への年額5万円超

国税庁「No.7431 報酬、料金、契約金及び賞金の支払調書の提出範囲と提出枚数等」によると、司法書士報酬を含むこの区分は、同一人に対するその年中の支払金額の合計が50,000円を超える場合に提出対象となります。

年額 提出 理由
50,000円 原則不要 5万円以下
50,001円 必要 5万円を超える
本設例の60,000円 必要 同一人への年額が5万円を超える

「5万円以上」ではなく「5万円を超える」が基準です。2026年中に支払が確定した未払報酬も含めて判定します。

消費税等を除外できる場合

国税庁の令和8年分手引35ページでは、提出基準の判定と支払金額の記載は消費税等を含めることが原則とされています。ただし、消費税等が明確に区分されていれば、その額を除外しても差し支えありません。

本設例では、判定額と支払調書の支払金額を60,000円とします。除外した消費税等6,000円は摘要欄に記載します。

3.年末は未払金66,000円を計上する

2026年12月25日の税抜経理による仕訳は次のとおりです。

借方科目 借方金額 貸方科目 貸方金額
支払手数料 60,000円 未払金 66,000円
仮払消費税等 6,000円
合計 66,000円 合計 66,000円

国税庁「No.2801 司法書士等に支払う報酬・料金」は、司法書士報酬を支払うときに源泉徴収するとしています。年末まで支払っていない本設例では、預り金をまだ計上しません。

4.支払調書は未払額を内書きする

国税庁の令和8年分手引第4章は、その年中に支払の確定した未払報酬も支払金額に含め、作成日現在の未払額を上段に内書きするよう示しています。未払のため徴収していない税額も、源泉徴収税額欄に内書きします。

請求書で消費税等が明確に区分されているため、源泉徴収税額の計算対象は報酬60,000円です。

(60,000円-10,000円)×10.21%=5,105円

1円未満の端数がある場合は切り捨てます。本設例では端数はありません。

欄 記載内容
区分 司法書士報酬
細目 役員変更登記
支払金額 60,000円
支払金額の内書き 60,000円
源泉徴収税額 5,105円
源泉徴収税額の内書き 5,105円
摘要 消費税等6,000円

内書きは合計額の内数です。支払金額60,000円に内書き60,000円を加えて、120,000円とするものではありません。

支払調書に未徴収税額5,105円を記載しても、年末の帳簿に預り金を計上するわけではありません。書類の記載と帳簿上の負債を分けて考えます。

5.支払時と納付時の仕訳

2027年1月20日の振込額は60,895円です。

項目 金額
報酬 60,000円
消費税等 6,000円
請求総額 66,000円
源泉徴収税額 △5,105円
振込額 60,895円
借方科目 借方金額 貸方科目 貸方金額
未払金 66,000円 預り金 5,105円
普通預金 60,895円
合計 66,000円 合計 66,000円

未払金はゼロになり、納付まで預り金5,105円が残ります。納期の特例を適用していないため、1月に徴収した税額の納付期限は翌月10日の2027年2月10日です。

借方科目 借方金額 貸方科目 貸方金額
預り金 5,105円 普通預金 5,105円

6.残高で検算する

時点 普通預金 未払金 預り金
取引前 100,000円 0円 0円
2026年12月25日 100,000円 66,000円 0円
2027年1月20日 39,105円 0円 5,105円
2027年2月10日 34,000円 0円 0円

司法書士への振込60,895円と国への納付5,105円の合計は66,000円です。普通預金の減少額も、100,000円-34,000円=66,000円となります。

仮払消費税等の決算整理には、会社全体の仮受消費税等や他の取引も必要です。このため、決算日後の仮払消費税等の残高は本件だけで断定せず、上表から除いています。

7.提出方法と番号の注意

支払調書は法定調書合計表とともに、支払事務を取り扱う事務所等の所在地を所轄する税務署へ提出します。

2027年1月以後に提出する法定調書は、2025年中に提出すべきであった同種類の法定調書が30枚以上なら、e-Tax、認定クラウド等または光ディスク等による提出が必要です。判定は法定調書の種類ごとに行います。

税務署へ提出する支払調書には、BのマイナンバーとT社の法人番号を記載します。Bへ写しを交付する場合、その写しにBのマイナンバーを記載することはできません。

支払調書を作成・提出しただけでは、資産、負債、収益、費用は動きません。提出自体の仕訳は不要です。

8.間違えやすい点

誤り 正しい処理
翌年払いなので令和8年分から除外する 2026年中に支払が確定した未払報酬を含める
5万円ちょうどを提出対象にする 基準は5万円以上ではなく5万円超
内書き額を合計額へ加える 内書きは合計額の内数として扱う
年末に預り金5,105円を計上する 年末は未払金を計上し、預り金は支払時に計上する
消費税等を除外して摘要を空欄にする 摘要欄に除外した消費税等6,000円を記載する
支払調書の提出日に費用を計上する 本設例では業務完了・支払確定日に費用を計上する

9.5日で定着させる

日 取り組む内容
1日目 支払確定日、決算日、支払日、提出期限、納付期限を並べる
2日目 50,000円、50,001円、60,000円の提出要否を判定する
3日目 12月25日の未払計上仕訳を書く
4日目 支払金額、未払額、源泉徴収税額、未徴収税額、摘要を記入する
5日目 支払と納付を仕訳し、普通預金、未払金、預り金を検算する

最初に分けたいのは、「年内に支払が確定した金額」と「実際に支払った日」です。ここが分かれると、支払調書の内書きと帳簿の預り金を混同しにくくなります。

10.確認した一次資料

支払調書は年内に確定した未払報酬まで集計します。帳簿では、未払計上、支払、源泉税の納付の順に残高を動かします。書類の内書きと帳簿の預り金を分けることが、年をまたぐ処理の要点です。

第223回 役員変更登記の司法書士報酬をゼロから整理:報酬4万円・登録免許税1万円・源泉徴収3,063円の仕訳

役員変更登記を個人の司法書士へ依頼した場合の請求額と支払額を、仕訳まで整理します。

請求・精算額54,000円と、司法書士へ振り込む50,937円は一致しません。差額3,063円は値引きではなく、会社が源泉徴収し、後日国へ納める所得税および復興特別所得税です。

1.請求書を三つに分ける

最初に「報酬」「報酬に対する消費税等」「会社が負担する登録免許税」を分けます。

項目 金額 税抜経理の科目 源泉徴収の計算対象
司法書士報酬 40,000円 支払手数料 対象
消費税等 4,000円 仮払消費税等 明確に区分されているため、本設例では対象から除外
登録免許税の立替額 10,000円 租税公課 会社が本来納付すべき実費であることが明らかなため対象外
合計 54,000円 三つの科目へ区分 計算対象額は40,000円

国税庁「No.2801 司法書士等に支払う報酬・料金」は、会社が本来納付すべき登録免許税等に充てることが明らかな金額について、源泉徴収は不要としています。

役員に関する事項の変更登記に対する登録免許税は、登録免許税法別表第一第24号(一)カにより、申請1件につき30,000円、資本金1億円以下の会社は10,000円です。資本金3,000万円のT社は後者に該当します。

2.源泉徴収税額3,063円を計算する

2026年中に居住者である個人の司法書士へ支払う本設例では、同一人に対する1回の報酬額から10,000円を控除し、残額へ10.21%を掛けます。1円未満の端数が生じた場合は切り捨てます。

(40,000円-10,000円)×10.21%=3,063円

計算式で控除する10,000円と、請求明細にある登録免許税10,000円は別物です。前者は源泉徴収税額の計算上の控除額、後者はT社が負担する税金です。設例では偶然同額になっています。

国税庁「No.6929 消費税等と源泉所得税および復興特別所得税」によれば、報酬と消費税等が明確に区分されていれば、消費税等を除いた報酬額だけを源泉徴収の対象にして差し支えありません。

請求書の表示 計算対象額 計算 源泉徴収税額
報酬40,000円と消費税等4,000円を明確に区分 40,000円 (40,000-10,000)×10.21% 3,063円
報酬等44,000円とのみ表示 44,000円 (44,000-10,000)×10.21% 3,471円

二段目は、報酬と消費税等が区分されていない場合の比較です。本設例の仕訳には一段目の3,063円を使います。

3.司法書士への振込額は50,937円

請求・精算額から源泉徴収税額を差し引きます。

項目 計算 金額
報酬 税抜報酬 40,000円
消費税等 40,000円×10% 4,000円
登録免許税 明確に区分された立替額 10,000円
請求・精算額 40,000+4,000+10,000 54,000円
源泉徴収税額 差し引く金額 △3,063円
振込額 54,000-3,063 50,937円

2026年10月26日の仕訳は次のとおりです。

借方科目 借方金額 貸方科目 貸方金額
支払手数料 40,000円 預り金 3,063円
仮払消費税等 4,000円 普通預金 50,937円
租税公課 10,000円
合計 54,000円 合計 54,000円

借方合計と貸方合計は、ともに54,000円です。預り金3,063円は会社の収益でも費用の値引きでもなく、国へ納付するまでの負債です。

4.預り金を国へ納付する

源泉徴収した税額は、原則として支払った月の翌月10日までに納付します。T社は2026年10月26日に支払っているため、本設例の納付期限は2026年11月10日です。

給与の支給人員が常時10人未満で、申請により納期の特例の適用を受けている場合は期限が異なります。要件と期限は、国税庁「No.2505 源泉所得税及び復興特別所得税の納付期限と納期の特例」で確認できます。

2026年11月10日に3,063円を納付した仕訳は次のとおりです。

借方科目 借方金額 貸方科目 貸方金額
預り金 3,063円 普通預金 3,063円

関連科目の残高を確認します。

時点 普通預金 仮払消費税等 預り金 費用累計
取引前 100,000円 0円 0円 0円
10月26日の支払後 49,063円 4,000円 3,063円 50,000円
11月10日の納付後 46,000円 4,000円 0円 50,000円

普通預金の減少額は、司法書士への50,937円と国への3,063円を合わせた54,000円です。請求・精算額と一致します。

5.源泉徴収と仕入税額控除は別に判定する

本設例では、司法書士報酬に標準税率10%を適用します。登録免許税10,000円には消費税等を上乗せせず、仮払消費税等も計上しません。

国税庁「No.6303 消費税および地方消費税の税率」は、消費税等の標準税率を10%としています。また、国税庁「No.6355 課税売上げと課税仕入れ」によれば、仕入税額控除には原則として一定事項を記載した帳簿と適格請求書等の保存が必要です。

消費税等を報酬と区分して源泉徴収の対象から外せるかという判定と、仕入税額控除を受けられるかという判定は別です。本設例では、後者の要件も満たすと仮定しています。

免税事業者、簡易課税制度の適用事業者、税込経理の事業者などでは処理が変わります。税込経理では、報酬と消費税等の合計44,000円を支払手数料として処理し、仮払消費税等を別計上しない方法があります。登録免許税10,000円は租税公課として区分します。

6.間違えやすい四つの点

間違えやすい処理 問題点 確認方法
54,000円の全額を支払手数料にする 報酬、消費税等、登録免許税が混ざる 請求明細を三つに分ける
請求額54,000円をそのまま源泉計算に使う 明確に区分された消費税等と登録免許税の除外、計算上の10,000円控除が反映されない 対象額40,000円を確定し、そこから10,000円を控除する
二つの10,000円を同じものと考える 登録免許税と計算上の控除額を混同する 実費の除外と法定計算を別の行にする
50,937円を振り込んで処理を終える 預り金3,063円が残ったままになる 納付日と納付後残高ゼロまで確認する

実務では、依頼先が個人か法人か、請求書の表示、登録免許税の負担者、消費税の課税方式、納期の特例の有無を資料から確認してください。不明点がある場合は、所轄税務署、税理士、司法書士などへ個別に確認する必要があります。

第222回 取締役の重任登記ゼロ入門:原則2年・一定の非公開会社の最長10年・2週間・登録免許税を整理(5日練習付き)

第221回では、最後の登記から12年を経過した株式会社のみなし解散を確認しました。

今回は、その前に行う取締役の任期管理です。同じ人が続けて取締役になる場合でも、任期満了後に再任すれば重任登記が必要です。

重任そのものに仕訳はありません。登記申請に伴う登録免許税には仕訳があります。まず法律上の日付を決め、その後に会計処理を考えます。

1.選任・就任・重任を分ける

用語 意味 S社の日付
選任 株主総会が取締役となる人を選ぶこと 2024年6月25日
就任 選任された人が承諾して取締役になること 2024年6月25日
任期満了 会社法または定款に基づく任期が終わること 2026年6月25日の定時株主総会終結時
重任 任期満了後、間を置かず同じ人が同じ役職に就任すること 2026年6月25日
変更登記 重任年月日などを登記簿へ反映すること 2026年7月2日に申請

氏名が変わらなくても、任期満了による退任と再度の就任が生じます。そのため、登記を省略することはできません。

2.2年任期は「選任日の2周年」ではない

会社法332条による取締役の原則的な任期は、選任後2年以内に終了する事業年度のうち、最後の事業年度に関する定時株主総会の終結時までです。

区分 取扱い
原則 選任後2年以内に終了する最後の事業年度に関する定時株主総会の終結時まで
短縮 定款または株主総会決議により短縮できる
最長10年への伸長 公開会社でない株式会社のうち、監査等委員会設置会社と指名委員会等設置会社を除く会社は、定款により伸長できる
監査等委員でない取締役など 機関設計に応じて別の任期規定があるため、個別に確認する

会社法上の公開会社は、上場会社と同じ意味ではありません。発行する株式の全部または一部について譲渡制限を設けていない株式会社が公開会社です。反対に、すべての株式について譲渡による取得に会社の承認を要する会社が、ここでいう公開会社でない株式会社です。

10年は上限です。非公開会社になれば自動的に10年になるわけではありません。機関設計と定款の両方を確認します。

3.S社の任期と登記期限を計算する

日付 出来事
2024年6月25日 Aを選任し、Aが就任を承諾
2025年3月31日 選任後に終了する第1の事業年度
2026年3月31日 選任後2年以内に終了する最後の事業年度
2026年6月25日 定時株主総会の終結時に任期満了。同じ総会で重任
2026年6月26日 2週間の期間計算を開始
2026年7月2日 重任登記を申請
2026年7月9日 本設例の申請期限

2024年3月期はAの選任前に終了しているため、任期計算に含めません。選任後に終了する2025年3月期と2026年3月期を数えます。

民法140条、141条および143条により、本設例では6月25日を算入せず、翌26日から2週間を数えます。末日は7月9日です。

4.同じ人でも重任登記をする

法務省の役員変更登記案内は、任期満了後、間を置かず同じ人を再任した場合にも役員変更登記が必要であると案内しています。

会社法915条1項では、登記事項に変更が生じたときから、本店所在地で2週間以内に変更登記をすることとされています。

S社では、Aが総会に出席し、その場で就任を承諾するため、重任日は2026年6月25日です。承諾が後日となる場合などは、登記原因の日を事実関係から確認します。

S社は取締役会を置かず、取締役がA一人です。会社法349条によりAが会社を代表します。取締役の任期満了に伴い代表者としての地位も更新されるため、取締役と代表取締役の重任を登記します。

申請前には、現行定款、登記事項証明書、株主総会議事録、株主リストおよび就任承諾を示す記載を確認します。議事録に就任承諾の事実が記載されている場合は、その記載を援用できることがあります。

必要書類は機関設計や代表取締役の選定方法によって変わります。S社のように取締役会を置かず、各取締役が会社を代表する会社で役員全員が重任する場合は、法務局の商業・法人登記申請書様式の「1-8」が確認の出発点になります。

5.登録免許税は資本金で判定する

登録免許税法別表第一第24号(一)カおよび国税庁「登録免許税の税額表」による役員変更登記の税額は、次のとおりです。

申請時の資本金 課税標準 税額
1億円以下 申請件数 1件につき1万円
1億円超 申請件数 1件につき3万円

S社の資本金は3,000万円です。したがって、重任登記1件の登録免許税は1万円、千円単位では10となります。

取締役一人ごとに1万円を納付するのではありません。ただし、同じ申請書で別の課税区分に属する登記も受ける場合は、その申請内容に応じて税額を計算します。

6.重任には仕訳なし、登録免許税には仕訳あり

2026年6月25日の任期満了と重任だけでは、S社の資産、負債、純資産、収益および費用は動きません。この日の仕訳はありません。

7月2日に登録免許税10を普通預金から支払ったときは、次のように仕訳します。

日付 借方科目 借方 貸方科目 貸方
2026年7月2日 租税公課 10 普通預金 10

借方と貸方は、それぞれ10で一致します。

区分 支払前 支払後
普通預金 30,300 30,290
資産合計 30,300 30,290
未払金 300 300
資本金 30,000 30,000
利益剰余金 0 △10
負債・純資産合計 30,300 30,290

登録免許税10の費用計上により当期利益が10減り、利益剰余金も10減るものとして簡略化しています。支払後も、資産30,290と負債・純資産30,290は一致します。

国税庁「租税公課等の損金算入の可否と租税の損金算入時期」では、法人が納付する租税公課等は、損金不算入とされるものを除き原則として損金算入するとされています。本設例の登録免許税10は支払時に租税公課として費用計上し、法人税上も同額を損金算入する前提であるため、申告調整はありません。

7.期限を過ぎても100万円を仕訳しない

法務局の商業・法人登記に関するFAQによると、登記期間を過ぎたことだけを理由に申請が却下されるわけではありません。遅れに気付いたら、放置せずに申請を進めます。

一方、会社法976条により、必要な登記を怠った代表取締役は100万円以下の過料に処される可能性があります。

項目 登録免許税 登記懈怠による過料
性質 登記を受ける際に納付する税 登記義務違反に対して科される可能性がある制裁
本設例 S社が1万円を納付 Aに対する決定はない
100万円 関係しない 上限であり固定額ではない
期限超過を知った時点 申請に必要な税額を確認する 有無も金額も未確定

本設例で過料の対象となり得るのは代表取締役Aであり、S社自身に科されるとは限りません。期限超過を知っただけで、S社が100万円を費用や未払金に計上することはありません。

S社がAに科された過料を負担する場合は、Aに対する経済的利益や役員給与に当たるかを含めて別途検討します。会社自身に科された過料の損金不算入を説明する国税庁資料だけで、この場合の処理を決めることはできません。

8.任期は毎期確認する

時期 確認すること
毎期末 役員の選任日、定款上の任期、機関設計を確認する
総会準備時 任期満了者と再任・交代の予定を照合する
総会当日 決議内容と就任承諾日を議事録に残す
総会直後 登記期限、申請担当者、申請予定日を決める
申請後 登記完了、納付証憑、仕訳を確認する

10年任期にしても、任期管理が不要になるわけではありません。毎期確認し、次に任期が満了する事業年度を更新します。

9.5日で確認する

日 練習
1日目 選任、就任、任期満了、重任の違いを書く
2日目 S社の任期満了日と2026年7月9日の登記期限を再計算する
3日目 定款と登記事項証明書で確認する項目を挙げる
4日目 租税公課10/普通預金10を転記し、残高を検算する
5日目 役員名、選任日、任期、対象事業年度、総会予定日、登記期限を一覧にする

確認問題:2024年6月25日に選任されたAの任期を計算するとき、2024年3月期を含めるでしょうか。

答え:含めません。2024年3月期は選任前に終了しています。選任後に終了する2025年3月期と2026年3月期を数え、2026年3月期に関する定時株主総会の終結時に任期が満了します。

10.まとめ

  • 原則2年の任期は、選任日の2周年ではなく、事業年度と定時株主総会から計算する
  • 一定の非公開会社は定款により最長10年まで伸長できるが、自動適用ではない
  • 同じ人を間を置かず再任しても、重任登記が必要になる
  • S社の登記期限は2026年7月9日で、7月2日の申請は期限内である
  • 重任自体には仕訳がなく、登録免許税の支払には仕訳がある
  • 資本金3,000万円のS社の登録免許税は1万円である
  • 100万円は過料の上限であり、期限超過時に直ちに計上する債務ではない

人が変わらなくても、任期は終わります。毎期一度、選任日と定款を確認しておけば、重任登記の見落としを防ぎやすくなります。

第222回 みなし解散・会社継続時の消費税ゼロ入門:3つの課税期間・申告期限・締切仕訳を整理(5日練習付き)

第221回では、みなし解散と会社継続によって、法人税の事業年度が三つに分かれることを確認しました。

今回は、同じ日程を消費税へつなげます。

法人の消費税の課税期間は、課税期間を短縮する特例を選択していない限り、その法人の事業年度です。したがって、みなし解散と会社継続で事業年度が三つに分かれる本設例では、消費税も三つの課税期間に分かれます。

ただし、みなし解散や会社継続そのものは売上げや仕入れではありません。法的な出来事と、消費税が動く取引を分けて整理しましょう。

1.三つの事業年度は三つの課税期間になる

消費税法19条1項2号と国税庁「課税期間」によれば、法人の課税期間は原則としてその法人の事業年度です。

法人税法14条1項1号・6号では、事業年度の中途で解散した場合は解散日で区切り、清算中の法人が継続した場合は継続日の前日で再び区切ります。

区分 課税期間 区切る理由 申告・納付期限
解散前 2026年4月1日~12月16日 みなし解散の日で終了 2027年2月16日
清算中 2026年12月17日~2027年1月19日 会社継続日の前日で終了 2027年3月19日
継続後 2027年1月20日~3月31日 継続日から通常の決算日まで 2027年5月31日

国税庁「申告と納税」によれば、課税事業者である法人は、原則として課税期間終了日の翌日から2か月以内に消費税と地方消費税を申告・納付します。表の期限日は、いずれも休日による繰下げがなく、延長もない本設例での日付です。

清算中の法人について残余財産が確定した場合には、最後の課税期間に特別な申告期限があります。しかし、S社は残余財産が確定する前に会社を継続するため、その特例は使いません。通常清算の最終申告と会社継続時の短い課税期間を混同しないことが大切です。

なお、事業年度が分かれたことと、各期間で課税事業者になることは別の論点です。実務では、基準期間、特定期間、課税事業者選択、適格請求書発行事業者の登録状況などを課税期間ごとに確認します。

2.みなし解散・会社継続だけでは消費税の仕訳をしない

会社法473条・476条によれば、清算株式会社は清算の目的の範囲内で存続し、所定の期間内であれば株主総会決議によって継続できます。

同じ法人が存続し、みなし解散または継続だけを理由とする資産の譲渡や対価の授受がない本設例では、その法的な出来事自体から消費税や仕訳は生じません。

出来事 消費税 仕訳
2026年12月16日のみなし解散 それ自体は課税売上げ・課税仕入れではない 法的地位の変更だけを理由とする仕訳はない
2027年1月20日の会社継続 それ自体は課税売上げ・課税仕入れではない 資産・負債の残高をそのまま引き継ぐ
顧客への役務提供 本設例では標準税率の課税売上げ 売上と仮受消費税等を計上する
事務用品の購入 要件を満たせば仕入税額控除の対象 消耗品費と仮払消費税等を計上する
確定した消費税等の納付 新たな課税仕入れではない 未払消費税等を取り崩す

実際に登録免許税や専門家報酬などを支払った場合は、その支出について別途仕訳と消費税区分を判定します。「継続の登記に関係する支出だから、すべて同じ税区分」とは限りません。

3.各課税期間の税額を別々に計算する

S社の開始残高は、現金2,000、資本金2,000です。各課税期間の取引は次のとおりです。

課税期間 取引日 課税売上げ 課税仕入れ
解散前 2026年11月30日 税込1,100
本体1,000・消費税等100
税込660
本体600・消費税等60
清算中 2027年1月10日 税込330
本体300・消費税等30
税込110
本体100・消費税等10
継続後 2027年3月10日 税込880
本体800・消費税等80
税込440
本体400・消費税等40

国税庁「消費税および地方消費税の税率」によれば、基準日現在の標準税率10%は、国の消費税率7.8%と地方消費税率2.2%から成ります。地方消費税は、納付すべき国の消費税額に22分の78ではなく、22/78を乗じて計算します。

課税期間 売上げに係る国税 仕入れに係る国税 納付する国税 地方消費税 合計
解散前 78.0 46.8 31.2 8.8 40
清算中 23.4 7.8 15.6 4.4 20
継続後 62.4 31.2 31.2 8.8 40
合計 163.8 85.8 78.0 22.0 100

金額は千円単位なので、31.2は31,200円を表します。たとえば解散前の期間は、国税31.2に地方消費税8.8を加え、納付額40となります。

三期間の合計納付額は100ですが、3月31日にまとめて一回だけ申告するわけではありません。40、20、40を、それぞれの課税期間の申告書で計算します。

実際の申告では、税率別集計、課税標準額や税額の端数処理、売上返還、貸倒れ、中間納付、控除対象外消費税額などにより、仮受消費税等と仮払消費税等の単純差額が納付税額と一致しないことがあります。本設例では、それらがない前提です。

4.税抜経理の仕訳を期間ごとに締める

国税庁「税抜経理方式または税込経理方式による経理処理」では、税抜経理方式の場合、売上げに係る消費税等を仮受消費税等、仕入れに係る消費税等を仮払消費税等として処理します。

日付・内容 借方 金額 貸方 金額
2026年4月1日
開始残高
現金 2,000 資本金 2,000
2026年11月30日
役務提供
現金 1,100 売上
仮受消費税等
1,000
100
2026年11月30日
事務用品購入
消耗品費
仮払消費税等
600
60
現金 660
2026年12月16日
第1課税期間の締切
仮受消費税等 100 仮払消費税等
未払消費税等
60
40
2027年1月10日
役務提供
現金 330 売上
仮受消費税等
300
30
2027年1月10日
事務用品購入
消耗品費
仮払消費税等
100
10
現金 110
2027年1月19日
第2課税期間の締切
仮受消費税等 30 仮払消費税等
未払消費税等
10
20
2027年2月16日
第1課税期間分の納付
未払消費税等 40 現金 40
2027年3月10日
役務提供
現金 880 売上
仮受消費税等
800
80
2027年3月10日
事務用品購入
消耗品費
仮払消費税等
400
40
現金 440
2027年3月19日
第2課税期間分の納付
未払消費税等 20 現金 20
2027年3月31日
第3課税期間の締切
仮受消費税等 80 仮払消費税等
未払消費税等
40
40

国税庁「納付税額または還付税額の経理処理」でも、税抜経理方式による納付税額は、その課税期間を含む事業年度で未払消費税等として計上する取扱いが示されています。

2027年1月20日に会社を継続しても、未払消費税等60を消去しません。第1課税期間分40と第2課税期間分20は、申告・納付まで同じ法人の負債として残ります。

5.現金・負債・純資産を検算する

時点 現金 未払消費税等 資本金+累積利益 貸借確認
2026年12月16日 2,440 40 2,400 2,440=40+2,400
2027年1月19日 2,660 60 2,600 2,660=60+2,600
2027年3月31日 3,040 40 3,000 3,040=40+3,000

各期間の税抜利益は、解散前400、清算中200、継続後400です。累積利益は1,000となるため、資本金2,000との合計は3,000です。

現金の最終残高も、2,000+売上入金2,310-仕入支出1,210-消費税等の納付60=3,040と一致します。第3課税期間分40はまだ納付していないため、未払消費税等として残ります。

開始仕訳から第3課税期間の締切仕訳までを合計すると、借方・貸方はいずれも5,790です。

6.初学者が区別したい五つの点

誤りやすい考え方 整理方法
3月31日に一年分をまとめて申告する 解散日と継続日前日でも課税期間を締める
会社継続時に勘定残高をゼロへ戻す 同じ法人なので現金や未払消費税等を引き継ぐ
仮受消費税等と仮払消費税等の差額が常に納付税額になる 控除要件、端数、簡易課税、控除対象外税額などを確認する
購入仕訳があれば仕入税額控除を受けられる 帳簿・請求書等の保存要件も確認する
法人税の申告期限延長が消費税にも自動適用される 消費税の延長要件と届出を別に確認する

7.5日で定着させる練習

日 練習内容 到達点
1日目 三つの課税期間と申告期限を書き写す 解散日と継続日前日で区切れる
2日目 法的な出来事と課税取引を分類する みなし解散・継続だけでは仕訳がないと判断できる
3日目 第1課税期間の売上・仕入・締切仕訳を書く 仮受100-仮払60=未払40を計算できる
4日目 第2・第3課税期間の仕訳と納付仕訳を書く 未払消費税等が期間をまたいで残る理由を説明できる
5日目 現金、未払消費税等、累積利益を検算する 最終残高3,040=40+3,000を確認できる

確認問題:2027年1月20日の会社継続直後、未払消費税等はいくらでしょうか。答えは、第1課税期間分40と第2課税期間分20の合計60です。会社継続そのものによる仕訳はありません。

8.まとめ

  • 法人の消費税の課税期間は、原則として法人税法上の事業年度と一致する
  • みなし解散日と会社継続日の前日で事業年度が区切られるため、本設例の課税期間は三つになる
  • 各課税期間の申告・納付期限は、延長がなければ原則として終了日の翌日から2か月以内となる
  • みなし解散と会社継続だけでは、課税取引も会計仕訳も生じない
  • 税抜経理では、仮受消費税等と仮払消費税等を課税期間ごとに締め、納付額を未払消費税等へ振り替える
  • 会社継続後も、現金や未払消費税等などの帳簿残高は同じ法人の中で引き継ぐ

事業年度の区切り、取引の税区分、締切仕訳の順に確認すると、短い課税期間が続く場合でも落ち着いて整理できます。

第221回 休眠会社のみなし解散ゼロ入門:12年・2か月・3年と会社継続後の3つの事業年度を仕訳で整理(5日練習付き)

第220回では、通常清算が終わった後の清算結了登記と帳簿保存を確認しました。

今回は、株主が解散を決めていないのに、長期間登記をしなかったため解散したものと扱われる「みなし解散」です。

最後の登記から12年が過ぎただけで、直ちに解散するわけではありません。法務大臣の公告後2か月以内に必要な登記または所定の届出をしなかったとき、解散したものとみなされます。

1.12年・2か月・3年・2週間を分ける

法務省の2026年度案内と会社法472条・473条をS社の日程へ当てはめます。

段階 日付・期間 意味
休眠会社の判定 2026年10月15日 最後の登記から12年を経過しているため、整理作業の対象となる
官報公告・通知発送 2026年10月15日 2026年度の実際の公告日・通知発送日
対応期限 2026年12月15日 必要な登記または所定の届出を行う期限
みなし解散 2026年12月16日 期限までにどちらも行わなければ、この日付で解散したものとみなされる
継続できる期間 みなし解散後3年以内 清算結了前に株主総会の特別決議を行う。S社は2027年1月20日に決議する
継続登記 継続決議から2週間以内 S社の申請期限は2027年2月3日

12年は整理作業の対象を決める期間です。2か月はみなし解散を避けるための対応期間、3年はみなし解散後に会社を継続できる期間、2週間は継続決議後の登記期間です。

なお、会社法472条による整理作業の対象は株式会社です。特例有限会社は含まれません。

2.営業や税務申告を続けていても防止策にはならない

会社法上の「休眠会社」は、営業実態や税務申告の有無ではなく、最後の登記からの期間で判定されます。

会社の行動 防止できるか 注意点
必要な役員変更等の登記を申請する できる 登記内容と必要書類を事前に確認する
「まだ事業を廃止していない」旨を届け出る その年度はできる 未登記の事実は解消されず、必要な登記をしなければ翌年度も対象になり得る
実際に営業や取引を続ける できない 事業実態だけでは会社法472条の手続に代わらない
法人税の申告・納付を続ける できない 税務署への申告と商業登記は別の手続
登記事項証明書や印鑑証明書を取得する できない 証明書の交付請求は新たな登記ではない
登記所からの通知が届かなかった できない 通知の不着にかかわらず公告後の期限が進行する

法務省の整理作業案内も、実際に事業を続けている場合や通知が届かない場合であっても、期限内の登記または届出が必要であると説明しています。

所定の届出をしてみなし解散を回避しても、登記を怠った事実まで消えるわけではありません。必要な登記と過料の可能性は別に確認します。

3.みなし解散だけでは資産・負債は消えない

会社法475条・476条により、みなし解散後のS社は清算株式会社となり、清算の目的の範囲内で存続します。

したがって、職権で解散登記がされても、現金、売掛金、買掛金、資本金などの帳簿残高がゼロになるわけではありません。法的地位が変わったという事実だけでは、資産、負債または純資産の増減がないため、その事実だけを原因とする仕訳もありません。

借方科目 金額 貸方科目 金額
現金 1,000 買掛金 200
売掛金 300 資本金 500
― ― 繰越利益剰余金 600
合計 1,300 合計 1,300

S社は清算中に売掛金を回収し、会社継続後に買掛金を支払います。

日付 借方 金額 貸方 金額 内容
2026年12月20日 現金 300 売掛金 300 帳簿価額どおり回収
2027年1月25日 買掛金 200 現金 200 会社継続後に帳簿価額どおり支払

取引後の現金は、1,000+300-200=1,100です。売掛金と買掛金はともにゼロとなり、借方の現金1,100と、貸方の資本金500+繰越利益剰余金600=1,100が一致します。

額面どおりの債権回収と計上済み債務の支払であるため、本設例では収益も費用も生じません。登記費用、専門家報酬その他の支出が実際に発生したときは、請求書や納付記録に基づく実額を別途仕訳します。

4.3年以内と2週間以内は別の期限

みなし解散後の会社継続には、次の条件を順番に確認します。

確認事項 S社の扱い
清算の状況 清算結了前である
継続可能期間 みなし解散後3年以内である
会社の意思決定 株主総会の特別決議を行う
継続日 決議で2027年1月20日と定める
登記期限 決議から2週間以内の2027年2月3日
会社機関 継続後の取締役、代表取締役、取締役会の有無などを定款と決議に合わせる

3年間は申告や登記を保留できる期間ではありません。会社を継続できる上限期間です。継続を決議した後は、2週間以内に登記を申請します。

法務局の商業・法人登記申請書様式には、みなし解散後の株式会社継続について、継続後の機関設計に応じた記載例があります。必要な登記事項が複数あれば登録免許税の合計も変わるため、継続登記だけの金額を全案件へ一律に当てはめないことが大切です。

会社継続は新会社の設立ではありません。同じ法人が続くため、現金、債権、債務、資本金などをゼロから計上し直す仕訳は行いません。

5.法人税の事業年度は三つに分かれる

法人税法14条1項1号・6号により、事業年度の中途で解散した場合は解散日で区切り、清算中の法人が継続した場合は継続日の前日で再び区切ります。

法人税基本通達1-2-4によれば、株主総会で継続日を定めたときはその日、定めなかったときは継続決議の日が法人税上の継続日です。継続登記の完了日を機械的に区切りの日とするわけではありません。

区分 期間 区切る理由
解散前の事業年度 2026年4月1日~12月16日 みなし解散の日で終了する
清算中の事業年度 2026年12月17日~2027年1月19日 会社継続日の前日で終了する
継続後の事業年度 2027年1月20日~3月31日 継続日から定款上の通常の決算日まで

帳簿残高は同じ法人の中で連続しますが、法人税の所得または欠損は三つの期間ごとに計算します。

国税庁「法人税法」教材は、確定申告書の提出期限を原則として各事業年度終了の日の翌日から2か月以内と説明しています。本設例の前提では次のとおりです。

対象期間 終了日 申告期限
2026年4月1日~12月16日 2026年12月16日 2027年2月16日
2026年12月17日~2027年1月19日 2027年1月19日 2027年3月19日
2027年1月20日~3月31日 2027年3月31日 2027年5月31日

三つの日はいずれも本設例では休日による繰下げがなく、申告期限の延長もない前提です。実際には承認済みの延長、災害、通算制度その他の事情を確認します。納付税額が生じない場合でも、申告義務まで当然になくなるわけではありません。

6.登記・会計・税務を一枚で管理する

時点 登記 会計・税務
2026年12月15日まで 登記事項証明書で最後の登記日と未登記事項を確認し、必要な登記または所定の届出を行う 通常の帳簿と申告を継続する
みなし解散後 登記記録と解散日を確認し、清算を続けるか会社を継続するかを決める 解散日で帳簿を区切り、清算開始時の書類と申告準備を進める
会社継続時 特別決議、役員等の整備、2週間以内の継続登記を行う 継続日前日で清算中の事業年度を締め、継続日から通常の事業年度へ戻す
各決算後 登記事項と実態の一致を確認する 各事業年度の所得・欠損と申告期限を別々に管理する

税務署には、法人の解散などが生じた場合、異動届出書を異動後速やかに提出します。会社継続に伴って事業年度、代表者その他の届出事項が変わる場合も該当事項を確認します。都道府県や市区町村への届出は、所在地の自治体が示す様式と期限を別途確認してください。

7.5日で定着させる練習

日 取り組む内容 確認できればよいこと
1日目 12年・2か月・3年・2週間を一行ずつ書く 四つの期間の目的を区別できる
2日目 営業、税務申告、証明書取得、届出、登記を分類する みなし解散を防ぐ行動だけを選べる
3日目 S社の売掛金回収と買掛金支払を仕訳する みなし解散・会社継続そのものは仕訳なしと判断できる
4日目 三つの事業年度と申告期限を書き出す 解散日と継続日前日で区切れる
5日目 自社または練習会社について、最後の登記日、通常の決算日、対応期限を一枚にまとめる 登記と申告を同じ予定表で管理できる

確認問題:S社が12月15日までに何もしなかった場合の解散日は12月16日です。1月20日に会社を継続する場合、清算中の事業年度は1月19日で終わります。仕訳後の現金は1,100、売掛金と買掛金はゼロで、借方・貸方はいずれも1,100です。

8.まとめ

  • 最後の登記から12年の経過は整理作業の対象要件であり、それだけで直ちに解散するわけではない
  • 2026年度は12月15日までに必要な登記または所定の届出がなければ、12月16日付で解散したものとみなされる
  • 営業や法人税申告を続けていても、会社法上の届出や登記の代わりにはならない
  • みなし解散後も資産・負債は残り、法的地位の変更だけを原因とする仕訳はない
  • 会社継続はみなし解散後3年以内の特別決議で行い、決議後2週間以内に登記する
  • 法人税の事業年度は、解散日と継続日の前日で区切って申告期限を管理する

登記の日付、帳簿、申告期限を順に並べると、みなし解散という例外的な場面でも落ち着いて整理できます。

第220回 清算結了登記と帳簿保存ゼロ入門:2週間・会社法10年・法人税7年/10年を整理(5日練習付き)

第219回では、清算事務が終わった後の決算報告を確認しました。

その承認後に行うのが、清算結了登記です。ただし、登記が終わっても帳簿資料の保存は続きます。

登記の2週間、会社法の10年、法人税の7年または10年は、それぞれ起算点が異なります。まず日付を分けましょう。

1.清算結了登記は承認日から2週間以内

会社法507条3項および929条1号により、清算株式会社は決算報告について株主総会の承認を受け、その承認の日から2週間以内に本店所在地で清算結了登記をしなければなりません。

日付 出来事 確認点
2026年10月22日 株主総会が決算報告を承認 2週間の基準となる日
2026年10月23日 期間計算の1日目 承認日は原則として算入しない
2026年10月27日 登記申請を受け付けた日 設例では清算結了登記年月日として記録
2026年11月5日 2週間の満了日 本設例の申請期限

民法140条から143条では、日・週・月・年で定めた期間は原則として初日を算入せず、暦に従って計算します。10月23日を1日目とすると、14日目は11月5日です。

末日が休日に当たる場合は、民法142条も確認します。補正に備えるためにも、満了日を待たずに申請するのが安全です。

申請の受付後には登記官の審査があり、手続の完了は後日になることがあります。保存期間を管理するときは、発送日や審査完了予定日ではなく、登記事項証明書などで清算結了登記年月日を確認します。

2.申請書、添付書類、登録免許税を確認する

商業登記法75条は、決算報告の承認があったことを証する書面の添付を求めています。

法務局の株式会社清算結了登記申請書の記載例による主な確認項目は、次のとおりです。

項目 内容
登記申請書 商号、本店、登記の事由、登記すべき事項などを記載する
株主総会議事録 決算報告書を含め、承認の事実を明らかにする
株主リスト 対象株主の氏名・名称、住所、議決権数などを記載する
委任状 代理人に申請を委任する場合に添付する
登録免許税 申請1件につき2,000円

登録免許税2,000円は、2026年10月22日現在の登録免許税法別表第一と法務局の記載例に基づく金額です。

必要書類は申請方法や代理申請の有無などによって変わります。実際の申請では、管轄法務局の最新様式を使います。

3.登記の事実と登録免許税の支払を分ける

決算報告の承認や清算結了登記は法的な手続です。それだけで資産、負債または純資産が増減するわけではないため、登記の事実自体には仕訳をしません。

一方、会社が登録免許税を負担すれば、費用と預金などが動きます。

借方 金額 貸方 金額
租税公課 2,000円 普通預金 2,000円

借方合計と貸方合計は、どちらも2,000円です。支払直前の普通預金残高が2,000円なら、支払後はゼロになります。

ただし、これは登録免許税の取引だけを抜き出した仕訳です。この仕訳だけで清算会社の全勘定残高がゼロになるわけではありません。

登録免許税は決算報告の承認後に行う登記申請に伴う費用です。実務では、承認前に負担者、支払原資、決算報告との整合を確認します。清算人が立て替えて会社に返還を求める場合は、貸方が未払金などになることもあります。

4.会社法の10年は清算結了登記の時から始まる

会社法508条により、原則として清算人は、本店所在地における清算結了登記の時から10年間、会社の帳簿と、その事業・清算に関する重要な資料を保存します。

S社では、株主総会の承認日である10月22日ではなく、清算結了登記年月日である10月27日が基準です。保存管理上は2036年10月27日までは廃棄対象にせず、廃棄前に他法令の保存期間も確認します。

会社法は保存対象を一つずつ列挙していません。次の表は、保存対象を点検するための整理例です。

分類 資料例
会計帳簿 仕訳帳、総勘定元帳、現金出納帳、固定資産台帳
決算関係 財産目録、清算開始時貸借対照表、決算報告
会社手続 株主総会議事録、登記申請の控え、登記年月日を確認できる資料
債権・債務 公告・催告の記録、債権申出書、回収・弁済の証憑、契約書
残余財産 株主別の分配計算、振込記録、分配完了日を確認できる資料
税務 申告書、届出書、納付記録、電子申告の受信通知、計算資料

裁判所は、利害関係人の申立てにより、清算人に代わる保存者を選任できます。誰が、どこで保存するのかも記録しておきます。

5.法人税の7年・10年は申告期限の翌日から数える

国税庁「No.5930 帳簿書類等の保存期間」によれば、法人税上の帳簿書類は、その事業年度の確定申告書の提出期限の翌日から原則として7年間保存します。

青色申告書を提出した事業年度に青色繰越欠損金が生じた場合、または青色申告書を提出しなかった事業年度に災害損失金額が生じた場合は10年間です。本稿は2018年4月1日以後に開始した事業年度を前提としています。

ケース 申告期限 起算日 保存期限
通常の事業年度 2026年3月31日 2026年4月1日 2033年3月31日まで
青色繰越欠損金が生じた事業年度 2026年3月31日 2026年4月1日 2036年3月31日まで

10年になるのは、青色繰越欠損金などが生じた対象事業年度です。後の事業年度の帳簿がすべて自動的に10年になる、という意味ではありません。

会社法の10年とは、起算点も保存対象も異なります。同じ資料に複数の保存義務がある場合は、最も遅い期限まで保存します。

6.電子取引データはデータのまま残す

国税庁の電子取引関係資料では、請求書、領収書、契約書などに相当する情報を電子的に授受した場合、その電子取引データを保存する必要があると案内しています。

紙へ印刷しても、元の電子取引データを削除してはいけません。清算に伴ってメールや会計サービスを解約する前に、必要なデータを取り出し、実際に開けることを確認します。

保存要件に従えないことについて所轄税務署長が相当の理由があると認める猶予措置でも、税務調査などの際に電子データのダウンロードの求めに応じ、電子データと整然・明瞭に出力した書面を提示または提出できる状態が必要です。

確認項目 確認内容
対象 電子請求書、領収書、契約、会計帳簿、申告データを洗い出す
可読性 保存先からファイルを開き、内容を表示できるか試す
保存要件 検索、改変防止、出力など適用される要件を確認する
責任者 清算後の照会に対応する人と連絡方法を残す
期限 根拠法令ごとの保存期限を記録する

7.税務署への異動届も別に確認する

国税庁「C1-8 異動事項に関する届出」は、法人の清算結了を届出対象としています。提出時期は「異動等後速やかに」です。

国税庁の案内上、添付書類はありません。e-Taxソフトのほか、書面を持参または送付する方法も示されています。

清算結了登記、確定申告、異動届出書は別の手続です。登記だけで税務署への申告や届出まで完了するわけではありません。

地方税、社会保険、許認可、金融機関などの手続は提出先によって異なります。所在地と事業内容に応じて、それぞれの一次資料を確認します。

8.5日で定着させる練習

日 取り組むこと 完了の目安
1日目 承認日、申請日、登記年月日を書き分ける 三つの日付の意味を説明できる
2日目 2026年10月22日の翌日から14日を数える 11月5日を導ける
3日目 登録免許税2,000円の仕訳を書く 借方と貸方が一致する
4日目 法人税の7年と10年の期限を計算する 2033年3月31日と2036年3月31日を区別できる
5日目 電子資料の保存場所、責任者、根拠、期限を書く 一つの表に整理できる

9.まとめ

  • 清算結了登記は、決算報告の承認日から2週間以内に申請します。
  • 会社法上の帳簿資料は、清算結了登記の時から10年間保存します。
  • 法人税上の帳簿書類は、確定申告書の提出期限の翌日から原則7年間、対象事業年度は10年間です。
  • 登記の事実自体には仕訳がなくても、会社が負担する登録免許税には仕訳が必要です。
  • 電子取引データは、紙だけでなく電子データも保存します。

清算が終わったときほど、日付を一つにまとめないことが大切です。「何を、誰が、いつまで保存するか」を最後に一表へまとめましょう。

第219回 清算結了時の決算報告ゼロ入門:収入・費用・残余財産・一株当たり分配額を仕訳で整理(5日練習付き)

第218回では、清算株式会社の債権者保護手続と債務弁済を確認しました。

債権の回収、債務や税金の支払、残余財産の分配が終わると、清算人は決算報告を作成します。

決算報告の「収入・費用」は、会計帳簿上の「収益・費用」と同じではありません。売掛金の回収は決算報告の収入ですが、新たな売上ではありません。借入金の返済は決算報告の費用ですが、会計上の費用ではありません。

1.決算報告に記載する四つの項目

会社法507条は、清算事務が終了したとき、清算株式会社が遅滞なく決算報告を作成するよう定めています。

決算報告の内容は、会社法施行規則150条に定められています。

項目 内容
収入の額 債権の取立て、資産の処分その他の行為による収入
費用の額 債務の弁済、清算に係る費用の支払その他の行為による費用
残余財産の額 支払税額がある場合は、その税額と控除後の財産額も表示
一株当たりの分配額 種類株式発行会社では株式の種類ごとに表示

一株当たりの分配額には、残余財産の分配を完了した日を注記します。金銭以外の財産を分配した場合は、その種類と価額も必要です。

2.第218回から引き継ぐ現金を確認する

前回までの回収と弁済を、決算報告に必要な数字へまとめます。

取引 借方 貸方 取引後の現金
売掛金の回収 現金1,000 売掛金1,000 1,000
貸付金の回収 現金300 貸付金300 1,300
買掛金の弁済 買掛金250 現金250 1,050
借入金の弁済 借入金400 現金400 650

債権の回収額は1,000+300=1,300、債務の弁済額は250+400=650です。弁済後の現金は650になります。

3.清算費用と法人税等を反映する

取引 借方 貸方 取引後の現金
清算費用の計上 清算費用40 未払金40 650
清算費用の支払 未払金40 現金40 610
法人税等の計上 法人税等10 未払法人税等10 610
法人税等の納付 未払法人税等10 現金10 600

最終的な現金は、650-40-10=600です。

清算費用40と法人税等10を反映すると、繰越利益剰余金は150-40-10=100になります。分配直前の残高は、現金600、資本金500、繰越利益剰余金100です。

資産600=純資産500+100となり、借方と貸方が一致します。

4.決算報告の数字を組み立てる

項目 内訳 金額
収入の額 売掛金の回収1,000+貸付金の回収300 1,300
費用の額 債務の弁済650+清算費用40+法人税等10 700
税額控除前の残余財産 税額控除後600+支払税額10 610
支払税額 法人税等 10
税額控除後の財産 610-10 600
一株当たりの分配額 600÷100株 6

開始時の現金がゼロなので、現金収支は1,300-700=600です。

支払税額10は費用700に含まれています。一方、会社法施行規則150条に沿った残余財産の表示では、税額控除前610、支払税額10、控除後600を分けて示します。税額10を二重に差し引くものではありません。

5.会計帳簿上の損益と混同しない

取引 決算報告 会計帳簿上の損益
売掛金1,000の回収 収入1,000 回収時の収益ではない
貸付金300の回収 収入300 元本回収なので収益ではない
買掛金・借入金650の弁済 費用650 元本弁済なので費用ではない
清算費用40 費用40 会計上も費用40
法人税等10 費用10 法人税等10を計上

会計帳簿上の損益減少額は50ですが、決算報告の収入は1,300、費用は700です。差額600は分配できる財産であり、「清算利益600」ではありません。

6.一株当たり分配額を検算する

会社法504条では、残余財産の割当ては、種類株式について異なる取扱いを定める場合などを除き、株主の有する株式数に応じて行います。

本設例の一株当たり分配額は、600÷100株=6です。金額の単位を円へ戻すと、一株6,000円になります。

株主 株式数 計算 分配総額
株主A 60株 60×6 360
株主B 40株 40×6 240
合計 100株 100×6 600

360+240=600となり、税額控除後の財産と一致します。

7.株主側の税務は別に判定する

法人税法22条5項では、残余財産の分配または引渡しは資本等取引に含まれます。清算会社が残余財産600を分配しても、その600を費用や損金にはしません。

会計上の繰越利益剰余金100が、そのまま株主側のみなし配当100になるわけでもありません。みなし配当は、交付額と税務上の資本金等の額のうち株式に対応する部分などから計算します。

国税庁「令和8年版 源泉徴収のあらまし・第5 配当所得の源泉徴収事務」でも、解散による残余財産の分配は、みなし配当が生じ得る事由として示されています。

ただし、本設例では株主の属性や税務上の資本金等の額を設定していません。源泉徴収の要否、税率、税額は数値化せず、実際の分配前に個別に確認します。

8.株主総会の承認から清算結了登記へ進む

順序 確認事項
1 債権回収、債務・税金・清算費用の支払を終える
2 残余財産の割当てを決め、株主への分配を完了する
3 収入、費用、残余財産、一株当たり分配額、分配完了日を記載した決算報告を作る
4 清算人会設置会社では清算人会の承認を受ける
5 株主総会へ決算報告を提出または提供し、承認を受ける
6 承認の日から二週間以内に、本店所在地で清算結了の登記を申請する
7 本店所在地における清算結了登記の時から、帳簿資料を十年間保存する

登記期限は会社法929条、帳簿資料の保存期間は会社法508条によります。

法務局「株式会社清算結了登記申請書・決算報告書の記載例」では、決算報告書の例と必要な記載事項を確認できます。実際の添付書類は、会社の機関設計や申請方法に応じて確認してください。

9.間違えやすい点

誤り 確認方法
売掛金回収を新たな売上にする 回収時の仕訳は現金と売掛金の振替
借入金返済を決算報告の費用から外す 会計上の費用でなくても、決算報告では債務の弁済として集計する
税額控除前610を分配する 支払税額10を控除した600を用いる
税額10を二重に差し引く 費用総額700と、税額控除前後の表示を区別する
一株当たりの分配額を省く 600÷100株=6、株主別合計360+240=600を確認する
分配完了日を記載しない 予定日ではなく、実際に分配を完了した日を記載する
利益剰余金100をみなし配当100と決める 税務上の資本金等の額と株主属性を使って別に判定する

10.5日で定着させる練習

  1. 1日目:決算報告の四つの記載事項を書き出します。
  2. 2日目:売掛金1,000と貸付金300の回収から、収入1,300を求めます。
  3. 3日目:債務650、清算費用40、法人税等10から、費用700と税額控除後の財産600を求めます。
  4. 4日目:600÷100株=6、60株分360、40株分240を計算します。
  5. 5日目:決算報告の収入・費用と、会計帳簿上の収益・費用を取引ごとに分けます。

まとめ

清算結了時の決算報告は、清算中の損益だけを示す書類ではありません。債権回収や債務弁済を含む清算事務全体をまとめます。

本設例では、収入1,300、費用700、税額控除前の残余財産610、支払税額10、控除後の財産600です。一株当たり分配額は6で、株主Aへの360と株主Bへの240を合計すると600になります。

決算報告の収入・費用、会計帳簿上の収益・費用、税務上の益金・損金は分けて確認します。